太陽光発電を工場で導入するメリットと
デメリット・注意点を解説

2024年4月11日
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太陽光発電は、家庭やオフィスだけでなく工場での導入も広がっています。本記事では工場での太陽光発電導入をご検討されているご担当者の方へ、メリットとデメリット・注意点を解説し、おすすめの太陽光発電の設置方法もご紹介します。

太陽光発電を工場で導入するメリット

太陽光発電を工場で導入することで、以下の6つのメリットを得られます。

電気代を削減できる

工場では設備を動かすために大量の電力が必要ですが、太陽光発電を導入して自家消費することで、電力会社から購入する電力量を減らし、その分の電気代を削減できます。
太陽光発電には固定価格買取制度(FIT)を活用して売電する選択肢もありますが、近年は買取価格が低下していることから、自家消費した方が金銭的メリットが大きい傾向があります。

昨今は世界的に燃料費が高騰しており、高騰分が電気代に転嫁されることがよくありますが、太陽光発電を導入して電気の購入量を抑えることで、電気代高騰の影響を小さくすることが可能です。

さらに、太陽光パネルを工場の屋根に設置すると、屋根に直接当たっていた日光を太陽光パネルが遮るため、屋根で発生する熱伝導が抑えられます。この遮熱効果によって、夏場の工場内の温度上昇を抑制でき、エアコンの設定温度を高くできるため、この点でも電気代の削減に貢献します。

脱炭素経営が実現できる

近年、気候変動対策が世界的な課題となっていることを背景として、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現を各国政府が掲げており、日本も2050年のカーボンニュートラル実現を目指しています。そうした中で、気候変動対策を経営に織り込んだ「脱炭素経営」に取り組む企業が増えています。
脱炭素経営を実践することで、顧客や取引先、投資家などに「環境対策に取り組む先進的な企業」というイメージを持ってもらうことができ、受注や資金調達などの面でメリットを得られます。
太陽光発電は化石燃料を利用しないクリーンなエネルギーであるため、脱炭素経営の実現に貢献します。

税制優遇による節税効果が得られる

太陽光発電を工場に設置すると、以下のような税制優遇制度を受けることができます。

・中小企業経営強化税制
資本金または出資金が1億円以下の中小企業が対象であり、全額を即時償却、もしくは最大10%の税額控除を受けられます。

・中小企業投資促進税制
資本金または出資金が1億円以下の中小企業が対象であり、取得価額の30%に相当する特別償却、もしくは取得価額の7%の税額控除を受けられる制度です。
※ただし、税額控除の対象となる法人は資本金3,000万円以下となっています。

こうした税制優遇制度を活用することで、より少ない費用で太陽光発電を工場に導入できます。

工場立地法の対策ができる

工場立地法は、一定以上の敷地面積や建設面積を有する工場に対して、生産施設面積や緑地面積、環境施設面積の割合に制限をかける法律です。
具体的には、敷地面積9,000㎡以上、または建築面積3,000㎡以上の工場が対象であり、敷地全体のうち環境施設を25%、緑地を20%以上整備することが義務付けられています。このうち、太陽光発電は環境施設に含めることができるため、太陽光発電設備を導入することで、工場立地法による規制の条件を達成しやすくなります。

BCP対策となる

BCP(事業継続計画)とは、自然災害をはじめとする非常事態が起きた際に、被害を最小限に抑え、速やかに事業を復旧させるための計画のことです。近年は大規模な災害が頻発しており、災害時には停電のリスクもあります。また、大規模な工場の場合、少しの間稼働が止まっただけでも大きな損害額が発生するおそれもあるため、BCPの策定は非常に重要です。
太陽光発電は停電が発生した際にも自家発電が可能であるため、優先的に稼働させたい設備に電力を供給することで、非常時にも損害を抑えることができます。蓄電池を導入すれば夜間にも電力を供給できるようになるため、さらに効果的です。

太陽光発電を工場で導入するデメリット

一方で、太陽光発電を工場に導入する際には、費用面やメンテナンスの手間がかかるなどのデメリットもあるため注意が必要です。

初期費用が高額

工場は一般的な家屋などに比べ設置できるスペースが広く、多くの電力を発電できますが、規模が大きい分、設置費用は高額になります。
産業用太陽光発電の平均的な費用相場は、1kWにつき18~25万円ほどです。単純に計算すると、100kWの太陽光パネルを設置する場合は、1,800~2,500万円程度の費用がかかります。
なお、上記は太陽光パネルやパワーコンディショナー等の本体価格に加え、工事費や設置用の部材費、架台を固定するための基礎工事なども含んだ価格です。

とはいえ、発電規模が大きいだけに電気代削減効果も大きく、10年ほどで初期投資分を回収できるケースも珍しくありません。太陽光パネルの寿命は25年以上持つとされており、長期的な運用を前提とすれば初期費用を回収できます。

定期メンテナンスが必要

太陽光パネルは屋外に設置することから、埃や黄砂、鳥のフンなどによって汚れ、発電効率が落ちたり故障したりするリスクがあります。また、台風などの強風によってパネルが吹き飛ばされ破損する可能性もあります。そのため、定期的なメンテナンスを行い故障のリスクを抑える必要があります。

太陽光パネルやパワーコンディショナーなど本体機器に加え、ケーブルや架台、キュービクルなどもメンテナンスの対象です。太陽光パネルは精密機械であり、さまざまな機器をメンテナンスする必要があることから、専門の業者に依頼するか施工会社のメンテナンスプランに加入しておくことが一般的です。

発電量が天候や時間帯などで変化する

日差しがない日や夜間など、天候や時間帯によって発電量が落ちてしまう点は太陽光発電のデメリットです。また、夏に比べ日照時間が短い冬も発電量が低下する傾向があります。
地域によっても日照時間は異なるため、設置場所の日照時間や日当たりの良さなどを踏まえて発電量をシミュレーションしておくことが大切です。

キュービクルの改造工事が必要な場合がある

キュービクル(高圧受電設備)を導入している工場に太陽光発電を設置する場合、キュービクルと接続する必要があります。また、既存のキュービクルの容量が太陽光発電の導入によって不足する場合は、容量を増やすために新たなキュービクルを設置するか、既存のキュービクルを改造しなければなりません。
キュービクルを追加する場合は200万円ほどの費用がかかりますが、「第一種電気工事士」の資格を持つ施工業者に改造を依頼することでコストを抑えることができます。

設置時は電力供給を停止しなければならない

太陽光発電の設置時には、ケーブルを新たに受電設備に接続する必要があり、その際安全に接続するために電力供給を一時的に停止しなければなりません。
工場は24時間稼働しているケースも少なくないため、あらかじめ電力供給停止のスケジュールを調整し、稼働停止による影響を可能な限り抑える必要があります。

太陽光発電を工場で導入する際の注意点

太陽光発電を工場に導入する際には、以下の点に注意する必要があります。

電力消費量を把握しておく

まずは、工場で使用している電力量を把握します。電力を使用している時間帯や消費量を分析することで、自家消費に必要な太陽光発電設備の大きさを把握でき、導入時の参考になります。
なお、電力消費量は契約している電力会社を通じて、使用電力量の平均値から算出されたデマンドデータを取得することで把握できます。
また、電力量に対する電気代もシミュレーションしておくことで、どの規模の設備を導入すればどのくらい電気代を削減できるか把握でき、コスト回収のシミュレーションを立てやすくなります。

太陽光発電設備の設置場所を調査する

工場の屋根にはさまざまな形状や材質のものがあり、場合によっては設置に適さない可能性があります。例えば88折板やスレート屋根の場合、パネルの設置時に屋根に穴を空ける必要があり、雨天時に雨漏りする可能性があるため注意が必要です。
また、屋根の耐荷重の関係で太陽光発電設備を設置できない場合があるほか、工場の所有者が別にいる場合は、所有者の許可を得る必要があります。
なお、傾斜角度が約30度の屋根は太陽光による発電効率が高いとされており、北向きでない屋根も設置に適しています。

対象となる補助金や助成金制度を活用する

太陽光発電を導入する場合、補助金の対象となる可能性があります。例えば「需要家主導太陽光発電導入促進事業」や「ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」といった事業があり、対象や条件に該当すれば導入費用の一部を補助金によって賄うことができます。
ただし、補助金は枠に対して申請数が多く締め切りが早いため、常に最新の情報をチェックしておく必要があります。

最新の補助金の情報については、下記よりお問合せください。

【お問合せ】

太陽光発電を工場で導入された事例

本章では、太陽光発電を実際に工場で導入した事例を2つご紹介します。

事例①工場の使用電力の3割を太陽光発電で賄う

水産加工を手がける株式会社瀬戸水産では、2022年に脱炭素の取り組みやBCP対策を進めるため、神奈川県にある関東営業所第一工場の屋根上に太陽光発電を設置しました。これにより、工場の使用電力の3割を賄うことができるようになりました。また、神奈川県の補助金も活用することで初期投資を5年で回収するシミュレーションを立てており、首都直下型地震や南海トラフ地震といった災害への備えとしても役立っています。

参考:環境省 自家消費型の太陽光発電の導入先行事例

事例②取引先からの排出量削減の要望を見据えたことで競争優位に

半導体向け装置の製造やウェハ加工等を手がける株式会社アドバンテックでは、PPA方式を活用し愛媛本社と長野工場に太陽光発電を導入しました(愛媛本社179kW、長野工場113kWの規模)。両者で14.6%の自給率を達成しており、取引先からの排出量削減の要望を見据え先行対応し、競争優位に立つことができました。
また、2021年に工場の屋根上に追加した太陽光発電についての初期コストは、10年足らずで回収できる見込みとなっています。

参考:環境省 自家消費型の太陽光発電の導入先行事例

太陽光発電を工場で導入するにはソーラーカーポートがおすすめ

ここまでご紹介したように、太陽光発電設備は工場に設置することができますが、工場の敷地内にある駐車場の屋根を活用したソーラーカーポートを導入する方法もあります。

ソーラーカーポートとは

ソーラーカーポートは、柱と屋根で構成された車庫(カーポート)の屋根に太陽光パネルを設置した太陽光発電設備を指します。空きスペースである駐車場の屋根を有効活用でき、設置費用が比較的安価というメリットがあります。

太陽光発電を工場で導入する場合にソーラーカーポートがおすすめな理由

工場は通常の事業所等に比べ敷地が広いため、駐車スペースのスペースも広いことが一般的です。そのため、大規模なソーラーカーポートを設置しやすいメリットがあります。広大なカーポートを利用して太陽光発電を行えるため、多くの電力を工場に供給することが可能です。

自社の工場に最適なソーラーカーポートをお探しのご担当者様へ

前述のように、工場に太陽光発電を導入する場合はソーラーカーポートがおすすめです。
屋上緑化システムでは、工場にも対応できる産業用ソーラーカーポート「ソーラーカーポートすっきりGX」をご提供しています。ソーラーカーポートの導入により電気料金を削減でき、CO2排出量の削減を通じて脱炭素経営の実現にも寄与します。

自社の工場に合ったソーラーカーポートを選定されたい方はぜひ下記の資料をご活用ください。

お役立ち資料

失敗しないソーラーカーポートの選び方
失敗しないソーラーカーポートの選び方
近年、太陽光発電設備の導入が進み、その中で注目を集めているのが、 デッドスペースである企業の駐車場の屋根上に設置できる「ソーラーカーポート」です。 本書では、ソーラーカーポートに関して、導入前に準備・確認しておくことや、施工業者の選び方などを、チェックポイント形式でご紹介します。
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