ソーラーカーポート設置に必要な建築確認申請とは?建築基準法や費用についても解説
本記事では、ソーラーカーポートを導入する前に知っておきたい建築申請の基礎知識をわかりやすくまとめました。
ソーラーカーポートに適用される建築基準法とは
ソーラーカーポートは建築基準法が規定する建築物に該当するため、建築基準法に則った設計や施工、管理が必要となります。本章では、建築基準法の概要やソーラーカーポートと建築基準法の関係についてご紹介します。
建築基準法とは
建築基準法とは、建物を建てる際の敷地や構造、設備、用途、工事の検査などに関する基準を定めた法律です。「国民の生命・健康及び財産の保護」を目的に制定されており、その目的を達成するために建物の建築において最低限守らなければならないルールについて記載されています。
ソーラーカーポートは特殊建築物に該当
ソーラーカーポートは太陽光パネルの下に駐車場用途があることから、建築物に該当します。そのため、ソーラーカーポートは自由に建てることができず、建築基準法などの関係法規を遵守した上で計画しなければなりません。
なお、建築基準法における「建築物」とは、「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの」と定義されており、「これに附属する門若しくは塀」「観覧のための工作物」「地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫」なども含まれます。
また、ソーラーカーポートは駐車場として活用されており、駐車場はガソリンを積んだ自動車を格納する場所であることから出火する危険性が高いとみなされ、建築物のなかでも「特殊建築物」に該当します。
建築基準法での特殊建築物とは、不特定多数の者が利用し、周辺への環境上の影響が大きく、衛生や防火の観点から特に規制すべき建築物等のことです。具体的には、学校、体育館、病院、劇場、博物館、美術館、図書館、観覧場、集会場、展示場、百貨店、市場、遊技場、映画スタジオ、テレビスタジオ、公衆浴場、旅館、共同住宅、下宿、工場、倉庫、自動車車庫、危険物の貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場などが該当します。
ソーラーカーポートは特殊建築物に該当することから、特に厳しい規制の対象となることには注意が必要です。特殊建築物として満たすべき条件はいくつかありますが、主なものとしては建ぺい率と容積率があります。
建ぺい率とは
建築基準法の代表的な条件として建ぺい率があります。建ぺい率とは敷地面積に対する建築面積の割合のことであり、建築面積÷敷地面積×100で算出されます。
建築面積とは土地の建物を真上から見たときの面積であり、土地に対してどの程度の規模の建物を建築できるかを定めたものです。建ぺい率が高すぎると日照や防災、風通しといった観点から望ましくないため、用途地域(土地の利用目的に応じて行政が定めた地域のこと。「居住地域」「商業地域」など)に応じて建ぺい率には制限がかけられています。
なお、用途地域ごとに定められた建ぺい率をオーバーすると違反建築物となるため、事前によく確認しておく必要があります。
容積率とは
建ぺい率と並び、建築基準法の代表的な条件として容積率もあります。容積率とは敷地面積に対する延べ床面積の割合のことであり、延べ床面積÷敷地面積×100で算出されます。建ぺい率が平面における建物の敷地を制限する指標であるのに対し、容積率は高さを加味し「土地に対して何階建ての建物を建築できるか」を定めたものと言えます。容積率が高いほど高層階の建物を建てることが可能です。
建ぺい率と同様に、容積率の上限も用途地域などに応じて都市計画によって定められており、容積率をオーバーしてしまうと違法物件となってしまうため確認が必要です。
ソーラーカーポートの設置に必要な建築確認申請とは
この章では、ソーラーカーポートの設置に必要な建築確認申請について解説します。
建築確認申請とは
ソーラーカーポートは建築基準法によって定められた建築物であるため、ソーラーカーポートを設置する場合には建築基準法や関連法規に則ったものであるか確認する手続きが必要です。この確認のための手続きを「建築確認申請」と呼びます。
建築確認申請では、まず設置工事の着工前に「建築確認」を行います。自治体の担当課(建築指導課など)か自治体が指定した民間の確認検査機関に建築確認の申請を行い、設計図や素材に関する資料などをもとに確認を受けます。ここで問題がなければ「建築確認済証」が交付され、工事を着工できます。建築が完了した後には「完了検査」を申請し、最終的な確認を受けた上で「検査済証」が交付されるのが一連の流れです。
建築確認が必要な理由
建築確認申請は、建築物が安全かどうかを審査するために必要とされます。建築基準法に違反した建物は防災などの面で周囲に悪影響を及ぼす可能性があるため、建築物の完成後に行われる完了検査を通じて、建築しようとしている建物が法的に問題なく、安全に配慮されているかを確認する必要があります。
建築確認申請が必要でない場合
ソーラーカーポートの大きさによっては、建築確認申請が必要でない場合もあります。具体的には、以下3つの条件すべてに当てはまれば建築確認申請は不要です。
① ソーラーカーポートの柱と柱の間の面積が10平方メートル以内の場合
② 防火地域および準防火地域外である場合
③ 既存建築物の敷地内の増築であり、用途上不可分の建築物である
1台分の広さのソーラーカーポートであれば、多くは面積が10平方メートル以内であるため建築確認が不要になる場合が多いですが、2台以上では建築確認が必要となる場合がほとんどです。
ソーラーカーポートの建築確認申請をしないデメリット
前述のようにソーラーカーポートの建築確認は不要の場合もありますが、建築確認をしない場合にはデメリットもあります。
災害リスクが確認できない
デメリットの1つに、災害リスクが把握できないことが挙げられます。建ぺい率が基準を超えており、建物やカーポートを敷地の境界ぎりぎりにまで迫った形で建ててしまうと、屋根に積もった雪が道路に落ちて通行の妨げになったり、隣の建物に落ちて迷惑になったりする可能性があります。また、隣の建物の日照や風通しを悪くしてしまい、生活環境を悪化させる原因にもなります。
それだけでなく、火災が起きた際には自社のソーラーカーポートから隣の建物へ延焼するリスクが高まるほか、大きな地震で発生した際には隣の建物の敷地に向かって倒壊するリスクも無視できません。
こうした防災や安全上の観点から、建築確認申請を行い建ぺい率を把握する必要があります。
建物を手放すときに不利になる
建築基準法の規定に適合しない建物のことを「違反建築物」と呼びます。建築確認申請を行い「検査済証」の交付を受けていれば、その建物が違反建築物でないことを証明できますが、建築確認申請を行わなければ、建ぺい率や容積率をオーバーしていないか確認できません。建ぺい率や容積率の基準は車庫や物置も対象となるため、ソーラーカーポートを設置したことで違反建築物に該当してしまう可能性も考えられます。
ソーラーカーポートが違反建築物であった場合、不動産の評価額が低くなり、建物を手放す際に不利益となってしまいます。また、違反建築物がある場合には相手方に対する「告知義務」が生じ、違反建築物であることを隠蔽して売約すると後で損害賠償を請求されるおそれもあります。
こうしたことから、建築確認申請を行い法的に問題ない建物であることを証明した方が良いでしょう。
ソーラーカーポートの建築確認は自分でできる?
建築士法の規定により、高さが13メートル以下かつ軒高が9メートル以下の木造建築物の場合、延べ面積が100平方メートル以下の2階建てまでの建物であれば建築士の資格はなくても設計・監理を行うことができるため、自分で建築確認を行うことができます。
木造以外の建築物の場合、この条件は高さが13メートル以下かつ軒高が9メートル以下で、延べ面積が30平方メートル以下の2階建て以下の建物となります。
表にまとめると以下の通りです。
| 高さ | 軒高 | 延べ面積 | 階数 |
木造 | 13メートル以下 | 9メートル以下 | 100平方メートル以下 | 2階以下 |
木造以外 | 13メートル以下 | 9メートル以下 | 30平方メートル以下 | 2階以下 |
以上の条件をカーポートに当てはめると、車1台分スペースを12.5平方メートルと仮定した場合、3台以上のカーポート建築には建築士の資格者が必要となり、自分で建築確認を行うことはできません。
ただし、申請にはさまざまな図面や書類が必要になるため、後述するように法律上は自分で建築確認を行っても問題ない場合でも、申請のノウハウがある業者に依頼するのがおすすめです。
ソーラーカーポートの建築確認申請の流れ
建築確認の審査自体は着工前と完成後に合わせて2回行われます。具体的な申請の流れは以下の通りです。
・建築確認申請
はじめに、建築主が自治体の担当課か自治体が指定する確認検査機関に建築確認申請を行います。
・着工前の事前審査
申請後、工事着工前に自治体等による事前審査を行います。審査完了後に確認済証が交付されます。確認済証があることで、図面や計画上は建築基準法に違反していないことが証明され、工事に着工できます。通常の建築物の場合、事前審査の期間は7日間以内です。
・工事の着工
建築確認済証が交付された後、工事の着工となります。ソーラーカーポートの建設工事は早ければ1日で終わります。
・完了検査を申請
工事が完了したら完了検査を申請します。完了検査の申請は、原則として工事が完了してから4日以内に行います。
・完了検査と検査済証の交付
完了検査の申請後、7日以内に完了検査が実施されます。完了検査を通じて、建築された建物が法令に遵守しているか現物を見て確認します。完了検査に合格すれば検査済証が交付され、建築確認の工程は完了となります。
なお、申請から検査済証の交付までの期間は、申請の内容や工事完了後の建物に問題がなければトータルで最長35日以内です。
ソーラーカーポートの建築確認申請に必要な書類
建築申請に必要な書類・図面は以下の通りです。
・書類関係(すべての建築物で提出が必要)
申請書類の種類 | 書式 | 部数 |
確認申請書 | 第二号様式 | 2部 |
建築計画概要書 | 第三号様式 | 1部 |
委任状 |
| 1部 |
建築工事届 | 第四十号様式 | 1部 |
受付表 |
| 1部 |
構造・省エネ適合判定が必要な場合は、適合判定通知書の写し(併せて申請書類・図書の提示が必要) |
| 1部 |
・基本図面(すべての建築物で提出が必要)
申請図面の種類 | 部数 |
付近見取図 | 2部 |
配置図 | 2部 |
各階平面図 | 2部 |
床面積求積図 | 2部 |
敷地面積求積図 | 2部 |
2面以上の立面図 | 2部 |
2面以上の断面図 | 2部 |
仕上表(使用建築材料表) | 2部 |
シックハウス検討書 ※24時間換気計算、有効換気量が確認できるカタログ | 2部 |
耐火構造等の構造詳細図(耐火リスト等) | 2部 |
法チェック図 ※採光・換気・排煙、防火区画等 | 2部 |
・構造関係図書
申請図面の種類 | 部数 |
基礎伏図 | 2部 |
各階床伏図 | 2部 |
小屋伏図 | 2部 |
2面以上の軸組図 | 2部 |
構造詳細図・構造標準図 | 2部 |
部材断面表 | 2部 |
使用構造材料一覧表 | 2部 |
地盤調査報告書(地盤改良検討書) | 2部 |
構造計算書 | 2部 |
安全証明書(ルート1の場合) | 2部 |
その他計画に応じて建築基準法施行細則第1条の3で定める図面 | 2部 |
・設備関係図書
申請図面の種類 | 部数 |
基電気設備図 | 2部 |
給排水設備図(衛生設備図) | 2部 |
昇降機(小荷物専用昇降機)図面 | 2部 |
消火設備図面 | 2部 |
避雷設備図面 | 2部 |
浄化槽の仕様書及び構造詳細図(建築地によっては浄化槽調書) | 2部 |
その他計画に応じて建築基準法施行細則第1条の3で定める図面 | 2部 |
なお、建築確認申請に必要な書類は地域や建物、計画内容などによって異なるため、あらかじめ自治体などに確認しておきましょう。申請書をはじめ必要な書類・書式は自治体のホームページからダウンロード可能です。
また、上記のように必要な書類の種類が膨大であり、専門的なものも多いため、施工業者や建築士などに代行してもらうのが一般的です。
ソーラーカーポートの建築確認申請に必要な費用
建築確認に必要な費用は自治体によって異なりますが、基本的には床面積に応じて費用も高くなります。東京都を例にとると、建築確認と完了検査の費用は以下の通りです。
床面積の合計 | 建築確認 | 完了検査 (特定工程に係らないもの) |
30平方メートル以内 | 5,600円 | 11,000円 |
30平方メートルを超え | 9,400円 | 12,000円 |
100平方メートルを超え | 14,000円 | 16,000円 |
200平方メートルを超え | 19,000円 | 23,000円 |
500平方メートルを超え | 35,000円 | 37,000円 |
1,000平方メートルを超え2,000平方メートル以内のもの | 49,000円 | 52,000円 |
出典:東京都HP(一部抜粋)
また、建築設備・工作物の手数料は以下の通りです。
申請の種類 | 建築確認 | 完了検査 (特定工程に係らないもの) |
イ 昇降機 | 9,600円 | 13,000円 |
ロ 小荷物専用昇降機 | 4,300円 | 8,600円 |
イ及びロ以外の建築設備 | 9,600円 | 13,000円 |
工作物 | 8,500円 | 9,600円 |
出典:東京都HP(一部抜粋)
ソーラーカーポートの建築申請は業者依頼がベスト
ソーラーカーポートの建築基準法の建築物に該当するため、法令に則った形で建設する必要があり、建築確認申請も行う必要があります。しかし、ソーラーカーポートの建築申請は手続きが煩雑であり、必要な書類も非常に多く時間を要するため、ソーラーカーポートを設置する業者が代行できる場合は代行してもらうのがおすすめです。
ソーラーカーポートすっきりGXは、事業者様・自治体様向けに設計されたソーラーカーポートであり、建築確認申請の書類作成や提出を代行しています。また「片流れタイプ」のソーラーカーポートは任意評価を取得しており、「背合わせタイプ」は現在取得進行中であるため、建築確認申請の簡略化が可能です。
導入にあたっては現地調査や発電量・削減できる電気代の試算、補助金の審査も行っており、導入コストの面でも安心です。
詳しくは、以下のソーラーカーポートすっきりGXのサービス詳細ページもご覧ください。
お役立ち資料
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