ソーラーカーポートのメリット&デメリット
後悔しないための注意点も解説
ソーラーカーポートのメリットとは
カーポートの屋根部分にソーラーパネルを搭載した設備である「ソーラーカーポート」は、SDGs(持続可能な開発目標)など環境意識の高まりを背景に注目されており、商業施設や工場などの駐車場で目にする機会も増えてきました。
そうしたソーラーカーポートにはどのようなメリットがあるのでしょうか。以下ではまず、ソーラーカーポートのメリットを5つご紹介します。
駐車場スペースを活用して電気代を削減できる
1つ目のメリットは、駐車場の屋根というデッドスペースを有効活用して太陽光発電を行い、電気代を削減できることです。
ソーラーパネルは事業所の建物の屋根に設置することがよくありますが、屋根の強度や面積の関係などから設置できない場合もあります。
そうした場合でも、駐車場の屋根に太陽光パネルを設置することで発電でき、事業所で使用する電力として活用可能です。すでに事業所の屋根にソーラーパネルを設置していたとしても、ソーラーカーポートを導入することでさらに発電量を増強できます。
また、昨今は資源価格の上昇や円安の影響で電気代高騰が続いていますが、ソーラーカーポートを設置し自社で発電することで電気代を一定程度賄うことができます。たとえば、2台分駐車可能なソーラーカーポートの発電量を5.33kWhとした場合、年間で約48,500円の電気代を削減できます。
脱炭素経営ができる
太陽光発電は発電時にCO2を排出しない環境に優しい発電方法であるため、脱炭素経営ができることが2つ目のメリットです。
SDGsに取り組んでいる企業や、RE100※1に加盟している企業、Scope3※2の排出削減を求められている企業など、環境への取り組みを行っている、あるいは取り組もうとしている企業は、ソーラーカーポートを導入していることで脱炭素経営に取り組んでいることをアピールできます。
自社の駐車場にソーラーカーポートを設置していれば、取引先や消費者などに対し環境に配慮した経営を行っていることを示すことができ、企業イメージ向上にも寄与します。
取引先から環境への取り組みを求められている場合も、ソーラーカーポートを導入することにより対応が可能です。
※1:使用電力を100%再生可能エネルギーで賄う国際的イニシアチブ
※2:サプライチェーン排出量のうち、自社での燃料の燃焼など直接的な排出量(Scope1)と他社から供給される電気などに由来する排出量(Scope2)を除いた間接排出のこと
ソーラーカーポートで電気代が削減できることや脱炭素経営を推進できることについては、下記ページで詳しくご紹介しています。
ソーラーカーポートで脱炭素経営を推進 | ソーラーカーポートすっきりGX-屋上緑化システム
非常用電源として活用できる
地震や台風など自然災害の発生時には停電になることが珍しくありません。災害の規模が大きいと長期間電気が供給されない可能性もあり、災害が頻発している近年は非常時の電源確保の重要性が高まっています。
ソーラーカーポートを導入していれば、災害などで停電が発生した際にも非常用電源として活用でき、事業継続におけるレジリエンス(強靭性)の強化につながります。
EVへの充電にも活用できる
ソーラーカーポートにEV用の充電設備やコンセントを併設することで、駐車中のEVに給電することも可能です。
社用車をガソリン車からEVに切り替えることでより環境に配慮した経営をアピールでき、EVの充電に必要な電気代も節約できるため一石二鳥です。
補助金を活用できる場合がある
ソーラーカーポートの導入には当然のことながら費用がかかりますが、国や自治体の補助金を活用することで費用負担を抑えることが可能です。たとえば国が実施している「再生可能エネルギー事業者支援事業費」と呼ばれる補助金を活用すれば、補助対象経費の3分の1(上限1億円)を賄うことができます。
ソーラーカーポートの補助金制度については以下の記事で詳しく解説しています
ソーラーカーポートのデメリットとは
環境面や経済面などで多くのメリットがあるソーラーカーポートですが、一方でデメリットもあります。主なデメリットは以下の6つです。
初期費用がかかる
1つ目のデメリットは初期費用がかかることです。ソーラーカーポートの導入時には、ソーラーカーポート本体の購入費用と設置費用、蓄電池やV2H(Vehicle to Home)などのオプション費用が必要になります。
費用の相場としては、ソーラーカーポート本体の価格が2台分で約200万円、ソーラーカーポートの設置費用は2台分の場合、約180万~240万円かかります。
また蓄電池やV2Hなどのオプション費用としては、住宅用の蓄電池は100~200万円、V2Hは40~100万円ほどかかることが一般的です。
なお、蓄電池はソーラーカーポートで発電した電気を貯めるための電池のことであり、導入することで夜間などソーラーパネルでの発電量が少ない時間帯の電力を賄うことができます。
また、V2Hとは家庭からクルマへの充電と、クルマから家庭への給電という双方向の電力のやり取りが可能になる設備のことです。V2Hを導入して夜間にEVに充電するなどして電力のピークシフトを回避したり、EVを非常用の蓄電池として利用したりすることができます。
このようなメリットがあるV2Hですが、駐車場2台分のソーラーカーポートとV2Hを設置する場合、合わせて420万円ほどが必要な計算となります。
とはいえ、産業用太陽光発電設備は100kW台で数千万円単位の導入費用がかかるため、それに比べればソーラーカーポートの初期費用は安価であり、比較的導入しやすいといえます。
維持費用が発生する
ソーラーカーポートにはメンテナンスなどの維持費用が発生します。太陽光発電装置の場合、法定耐用年数は17年となっていますが、一般的にソーラーパネル自体の寿命は20年~30年ほどとされています。
ソーラーカーポートは屋外に設置するため風雨の影響を受けやすく、埃や花粉、黄砂などにより汚れたパネルを放置していると発電効率が低下します。安全かつ効率的に稼働させるためには、定期的にメンテナンスすることが不可欠です。
太陽光パネルの点検・メンテナンスでは下記の工程が必要となります。
・パネルの清掃
・検電
・電圧測定
・耐圧試験
・故障位置測定
・異常クラスタ検出
ソーラーパネルは高価で内部の仕組みが複雑であり、測定作業などには専用の器具も必要になるため、自社で点検を行うのではなく専門の業者に依頼すべきです。頻度としては最低でも4年に1回は行っておくことがおすすめです。
なお、太陽光発電システムは劣化すると発電量が落ちることがあり、電力の変換装置である「パワーコンディショナー」の場合、使用開始から10年ほどで性能が落ちてしまいます。使用開始から5年で発電量は3%ほど低下しはじめ、10年では6%から8%程度の発電量の低下が起きるとされます。こうした経年劣化はあらかじめ考慮しておいた方が良いでしょう。
建築申請の手続きが必要・手間がかかる
ソーラーカーポートは太陽光パネルの下に駐車場用途があり、駐車場はガソリンを積んだ自動車の格納庫であることから、出火する危険性が高い特殊建築物に該当します。そのため、駐車場の上に設置するソーラーカーポートには厳しい規制がかかり、建築基準法や消防法をはじめとする関係法規や告示等を遵守して計画・設置しなければならず、建築申請の手続きが必要です。
具体的には基準風速、垂直積雪量、地盤条件等を踏まえた、建築基準法上の構造安全性の確認が必要となります。申請時に必要な書類は地域や建物によって異なるため、建設予定地の自治体ホームページもしくは自治体の担当部署(建築指導課や都市計画課など)へ確認することがおすすめです。
また構造安全性のほかにも、法令および都市計画によって定められている建ぺい率と容積率の条件を満たしているか確認する必要があります。建ぺい率は敷地面積に対する建築面積の割合を指し、容積率は敷地面積に対する延床面積の割合を指します。
用途地域や地目は、宅地や雑種地であることが望ましいでしょう。これは、市街化調整区域の場合は原則として建築物を建てられず、住居系用途地域の場合も規模によっては建築できない可能性があるためです。また、農地の場合は農地転用の手続きが必要となります。
そのほかにも、関係法規・条例次第で設置を制限される場合もあるため、こうした点についても事前に自治体への確認が必要です。
なお、建築申請は以下の流れで行います。
1. 自治体の担当部署あるいは指定確認検査機関に対し、建築確認申請を行う
2. 自治体による確認完了後、建築確認済証が交付される
3. 工事を着工する
4. 建物の建築後に「完了検査」を申請する
5. 完了検査を受け、検査済証が交付される
手続きの期間としては通常2~3か月ほどかかります。このように、建築申請の手続きで多くの手間や時間がかかることはデメリットの1つと言えるでしょう。
固定資産税が必要な場合がある
ソーラーカーポートには固定資産税がかかる場合があり、その費用を負担しなければならない点もデメリットです。具体的には、定格出力(安定して出力し続けられる電力)10kW以上のソーラーカーポートの場合、事業用途設備とみなされるため、固定資産税の対象となります。ソーラーカーポートの発電量は駐車場1台分で約3.6kWであるため、目安として駐車場4台分以上の場合は固定資産税の対象となると考えておいた方が良いでしょう。
また、設置するカーポートが以下の3つの条件すべてに当てはまる場合にも固定資産税がかかります。
①カーポートの基礎が地面に固定されている
②カーポートの3方向以上が壁に囲まれている
③カーポートが居住や貯蔵などに利用できる
分かりやすく言えば、周囲を屋根や壁で囲まれているガレージ・車庫タイプのソーラーカーポートは固定資産税がかかる可能性が高いということです。反対に、屋根と柱のみで構成されており壁に囲まれていないカーポートであれば、「3方向以上が壁に囲まれている」という条件に該当しないため、固定資産税はかかりません。
ソーラーカーポートに固定資産税がかかる条件や計算方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
駐車しにくくなる場合がある
これまでカーポートを設置していなかった駐車場に新たにソーラーカーポートを設置する場合、柱のタイプや位置によっては駐車しにくくなり、利便性が低減してしまう可能性があります。大型車でも駐車やドアの開閉の妨げにならないよう、カーポートのサイズにはある程度の余裕を持たせた方が良いでしょう。
また、たとえば2台分の駐車用であれば、6本柱ではなく強度の高い4本柱のタイプを選ぶといった対策も効果的です。
他の建物の影に入ってしまう場合がある
ソーラーカーポートの屋根部分は隣接する事業所や住宅などよりも低いことが多く、周囲の建物との位置関係によっては建物の影に入ってしまう時間帯が長くなる可能性があります。日陰に入る時間が長いと十分な発電量を確保できないため、設置前に周囲の建物の位置や日光の射す方向などをよく確認し、できるだけ十分な日照量を確保できる設置場所を選定しましょう。
ソーラーカーポートで後悔しないために
ご紹介したデメリットを踏まえて、ソーラーカーポートを導入して後悔しないための対策を以下でご紹介します。
初期費用が不要のPPAモデルで導入する
初期費用と維持管理費用が不要である「オンサイトPPAモデル」や「リースモデル」で導入すれば、導入コストが高いというデメリットを払拭できます。
オンサイトPPAモデルは、自社の敷地を電力事業者に貸して、事業者が発電設備を設置する方式です。発電した電力はあらかじめ契約した内容に基づいて事業者から購入するため、契約期間中に電気代が高騰しても一定の費用で電気を利用できます。
リースモデルも、オンサイトPPAと同様に自社の敷地を電力事業者に貸し、リース事業者所有の発電設備を設置する方式です。契約期間中は、毎月一定のリース料を支払います。発電した電力は自社で使用し、使い切れなかった分は電力会社に売電もできます。
初期費用のかからないオンサイトPPAモデルですが、下記のデメリットもあります。
・電気料金がかかる
自社で太陽光発電システムを保有する「自社所有モデル」であれば、発電した電力分は電気料金がかかりませんが、オンサイトPPAモデルでは契約内容に基づいて電気料金が発生してしまいます。
・自社所有モデルの方が利益は大きい
自社所有モデルでは初期費用はかかるものの、一度設置すれば発電した電力は無料で利用できます。一方、オンサイトPPAモデルは月々の電気料金が発生し、さらに電気料金にはPPA事業者の利益も上乗せされるため、長期的には自社所有モデルの方が、経済的メリットが大きくなります。
そのほかにも、契約期間が長いことや設置場所など条件面での審査があることなどもオンサイトPPAモデルのデメリットです。
メンテナンス費用と項目を確認する
ソーラーカーポートにはメンテナンスが都度かかるため、メンテナンスにかかる費用と内容を事前に確認しておくことが重要です。
なお、一般的なメンテナンス費用の相場は、4年に一度の点検でおよそ5万円前後です。ただし、設備に故障や不具合があった場合には、修理や部品の交換などでさらに多くの費用がかかります。特に、ソーラーパネルそのものやパワーコンディショナーの修理・交換費用は高額になりやすいので注意が必要です。
建築申請が代行可能な企業を選定する
前述の通り、ソーラーカーポートの設置には建築申請が必要であり、その申請にかかる手間は大きな負担となります。また、2~3か月の申請期間が必要になることもネックです。
そこで、建築申請を代行してくれる企業を選定することで面倒な手続きから解放されます。
事前に届け出などを代行してくれる業者をピックアップし、実績などを基に比較して選定するのがおすすめです。
任意評価を取得した製品を選定する
建築申請を代行してくれる企業を選定するほかにも、建築確認申請が簡略化された製品を選ぶことで建築確認申請期間を短縮できます。
その際に必要になるのが「任意評価」と呼ばれるものです。任意評価とは建築物の構法や部材、基礎に関する技術、耐久・劣化、防火、防水などの性能について、建築技術の専門家が審査・評価を行うものです。任意評価を取得した製品であれば信頼性が高いとみなされ、建築確認申請を簡略化できます。
「ソーラーカーポートすっきりGX」の片流れタイプの屋根は、任意評価を取得しているため建築確認申請の大幅な簡略化が可能です。建築確認申請の代行もトータルサポートしており、横柱がないので駐車しやすいメリットもあります。
ソーラーカーポートすっきりGXの詳細については以下をご覧ください。
ソーラーカーポートすっきりGX
「片持ち屋根」のソーラーカーポートを採用する
柱が一方にしかない「片持ち屋根」タイプのソーラーカーポートを採用することも効果的です。片持ち屋根タイプであれば駐車時に柱が邪魔になりにくく、駐車スペース内に柱が配置することはないため自由なレイアウトも可能となります。
また、周囲を壁で囲まないため固定資産税もかかりません。
ソーラーカーポートのメリット&デメリットを踏まえて導入しましょう
今回はソーラーカーポートのメリット・デメリットについて解説し、デメリットを踏まえて後悔しないための対処法をご紹介しました。
ソーラーカーポートは、環境へ配慮した経営や電気代の節約といった面で非常に役に立ちますが、初期費用やメンテナンス費用に加え固定資産税がかかる場合もあることや、建築申請に手間がかかることなどのデメリットもあります。
そうしたデメリットを解消するためには、建築申請が代行可能な企業や任意評価を取得した製品を選定したり、「片持ち屋根」タイプのソーラーカーポートを採用したりするなどの対策をとることが効果的です。
ソーラーカーポートについてご不明点などございましたらお気軽にお問合せください。