【図解あり】脱炭素とカーボンニュートラルの違いを徹底解説

2023年11月10日
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地球温暖化が世界的な課題となる中、CO2など温室効果ガスの排出削減が企業には強く求められています。そこで知っておきたいのが「脱炭素」や「カーボンニュートラル」といった概念です。

どちらもCO2の排出量を実質的にゼロにする点では同じですが、どのような違いがあるか分からない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、脱炭素とカーボンニュートラルそれぞれの定義や違い、またこれらに関連する用語などをあわせて解説します。

脱炭素とは

脱炭素とは、二酸化炭素(CO2)の排出量をゼロにすることです。

日本でも2020年10月に、当時の菅義偉首相が所信表明演説で「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と発言し、世界的な取り組みと歩調を合わせています。

カーボンニュートラルとは

脱炭素と類似の概念として「カーボンニュートラル」があります。カーボンニュートラルとは、CO2の排出量から吸収量を差し引き、実質的に排出ゼロを実現することを意味します。植物はCO2を吸収し酸素を生み出すことから、植林や適切な森林の管理・保全を進めることでCO2の吸収量を増やすことが重要です。

人類が現在の経済・社会を維持する以上、CO2の排出量そのものをゼロにすることは現実的ではありません。そこで、人為的なCO2の排出量を可能な限り削減するとともに、植物の生育を通じてCO2の吸収量を増やし、排出量の均衡を達成するカーボンニュートラルが注目されています。

脱炭素とカーボンニュートラルの違いとは

脱炭素もカーボンニュートラルも、CO2の排出量を実質的にゼロにする点は同じですが、ニュアンスに違いがあります。

脱炭素はCO2の排出量自体を減らし、最終的にゼロにすることを意味する一方、カーボンニュートラルはCO2の排出量と吸収量を均衡させることに主眼が置かれます。少々極端に言えば、CO2排出量が現状と変わらなくても、吸収量がそれを相殺できるほど大きくなればカーボンニュートラルは実現できるということです。とはいえ、吸収量を多くするだけでは現実的にカーボンニュートラルの実現は難しいため、いずれにしてもCO2の排出量を削減する努力が必要となります。
脱炭素とカーボンニュートラルの違い

最近では、改正省エネ法による罰則リスクだけでなくCO2排出に伴う増税が検討されていることから、脱炭素やカーボンニュートラルが注目を集めています。

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脱炭素やカーボンニュートラルに類似する関連用語

以下では、脱炭素やカーボンニュートラルに関連する用語について解説します。

脱炭素ドミノ

脱炭素ドミノとは、脱炭素化に向けた取り組みを率先して行う地域から、その周辺の地域へと脱炭素の取り組みがドミノのように波及していくことです。

令和3年に国が策定した「地域脱炭素ロードマップ」で提唱されました。なお、率先して脱炭素に向けた取り組みを行う意欲や実現可能性の高い地域を「脱炭素先行地域」と呼び、国が年2回募集し、全国の自治体が応募しています。

脱炭素は全国すべての地域が一律に行えるわけではありません。

そこで、脱炭素の取り組みに対する意欲や実現可能性の高い脱炭素先行地域が中心となり、成功事例をつくることで、周辺の地域が類似の取り組みを推進しやすくなり、やがて全国規模で脱炭素が進むことが期待されます。

つまり、脱炭素ドミノは地方自治体や地域住民が主体となった草の根的な活動であると言えます。

ゼロカーボン

ゼロカーボンとは、CO2の排出量を全体として実質ゼロにすることです。

CO2の排出量を削減することに加え、森林によるCO2の吸収量を増やし、排出量と吸収量を差し引きゼロにする考え方を指します。

CO2の吸収量も考慮した考え方という点で、前述のカーボンニュートラルと同義です。なお、海外では同じ意味で「ネットゼロ」という言葉もよく使われます。

カーボンオフセット

カーボンオフセットとは、CO2の排出量を可能な限り削減した上で、それでも排出されてしまう分を埋め合わせる(offset)ための取り組みや考え方のことです。

具体的な埋め合わせのための取り組みとしては、CO2排出量を削減するための省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの導入、森林の再生活動への投資などが挙げられます。

しかし、こうした活動をすべて個人や企業単位で行うことは難しいため、日本では省エネ設備の導入や森林再生事業などによるCO2の排出削減量・吸収量を取引できる「J-クレジット」という制度が創設されています。

J-クレジットを購入することでCO2排出量の埋め合わせが可能となり、さらに購入した資金が再生可能エネルギーの普及や植林などの活動に投じられる仕組みとなっています。

カーボンネガティブ

カーボンネガティブとは、温室効果ガスであるCO2の排出量が森林による吸収量よりも少ない状態を指します。つまり、カーボンネガティブの状態を続けていけば大気中のCO2量が減少し、地球温暖化を食い止められる可能性がより高まるということです。

カーボンネガティブはCO2の排出量を吸収量よりも少なくすることを意味するため、両者を一致させるカーボンニュートラルよりもさらに踏み込んだ取り組みだと言えます。

カーボンネガティブと似た概念に「カーボンポジティブ」があります。カーボンポジティブとは、CO2の吸収量を排出量よりも多い状態にすることであり、カーボンネガティブと同じ意味です。

ただし、カーボンネガティブはCO2を除去すること(ネガティブ)に焦点を当てている一方、カーボンポジティブはCO2を吸収すること(ポジティブ)に焦点を当てています。

カーボンプライシング

カーボンプライシングとは、企業が排出するCO2に価格をつけることを通じて、排出者の行動を変容させるための取り組みです。

CO2を排出するのにお金がかかると、企業はなるべくCO2を排出しないようにするため、たとえばCO2の排出量が少ない製品の製造方法を開発・導入するなどの取り組みを進めることが期待されます。

カーボンプライシングは、地球温暖化対策のためのCO2排出削減と企業のビジネスを両立させる方策として注目されています。

カーボンプライシングの代表的な手法としては、「炭素税」や「排出権取引」などがあります。炭素税は燃料を使用したり電気を消費したりした際に排出したCO2の量に応じて課税するものであり、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換を促します。

排出権取引とは、企業ごとにCO2の排出量の上限を設定し、上限を下回った企業がその分を排出枠として設定した上で、上限を上回った企業に売却する制度のことです。

上限を超えてCO2を排出すると、排出権を購入しなければならずコストがかかるため、排出量を削減しようとするインセンティブが働きます。これにより、社会全体での排出量を削減する仕組みです。

RE100

RE100は“Renewable Energy 100%”(再生可能エネルギー100%)という意味で、企業が事業活動で使用するエネルギーのすべてを再生可能エネルギーで賄うことを目標とする国際的イニシアチブ、およびそれに加盟した企業集団のことです。イギリスの非営利組織である“The Climate Group”が主導したことがきっかけで世界的に広まりました。

近年は多くの企業がSDGs(持続可能な開発目標)を掲げ、環境保護や地球温暖化対策へコミットすることが求められています。株主もESG投資(環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮している企業に優先的に投資すること)の視点から投資先の企業を選ぶようになってきました。また、消費者の環境意識も高まり、環境問題への配慮がないと消費者に判断されることは企業経営上の大きなリスクとなっています。これらは経済活動の規模が大きく、グローバルに活動する大企業ほど重視しなければならない点です。

こうした時代背景の中で、自社で使用するエネルギーを100%再生可能エネルギーから調達することを目標とするRE100の加盟企業は、環境問題に対して真剣に取り組んでいることをアピールできます。これにより脱炭素社会の実現に貢献できるだけでなく、自社のブランドイメージ向上などにも役立てることが可能です。

脱炭素やカーボンニュートラルに向けて企業が取り組むべきこと

脱炭素やカーボンニュートラル実現に向けて、企業はどのような取り組みをすれば良いのでしょうか。主な取り組みとしては以下の3つがあります。

自社のCO2排出量を把握する

まずやるべきことは、自社のCO2排出量を把握することです。現時点でどのくらいのCO2を排出しているのかを把握できなければ、脱炭素、カーボンニュートラル実現に向けてどのような道筋で排出量を削減するかという具体的な計画を立てることができないためです。

排出量を把握することで、どの部門や事業領域で多くのCO2を排出しているか、その原因は何かといったことを特定できるようになり、排出量削減に向けた効果的なロードマップを描けるようになります。

排出量を把握する方法としては、たとえば日本商工会議所が自社のエネルギー使用量やCO2排出量を可視化するツール「CO2チェックシート」(https://eco.jcci.or.jp/checksheet)を無料で提供しています。

省エネルギー対策を行う

脱炭素やカーボンニュートラルを実現するためには、CO2排出の原因となるエネルギー利用量を可能な限り抑える必要があります。そこで重要になるのが省エネルギー対策です。省エネの対策としては、主に以下の取り組みが挙げられます。

・エネルギー使用量の見える化

まずは会社全体でどのくらいのエネルギーを使用しているのかを可視化し、無駄にエネルギーを使用している部門や工程、事業などがないか洗い出します。無駄が発生している箇所から優先的に省エネ対策を進めることで、効率的にエネルギー使用量を削減できます。

・省エネ機器・製品の導入

OA機器や照明、空調といったオフィスで使用する機器や製品を省エネタイプのものへ切り替えることも簡単にできる省エネ対策です。たとえば、省エネ効果の高いLED電灯の導入などが効果的です。

また、社用車をガソリン車からハイブリッド車やEV(電気自動車)にシフトすることで、化石燃料が原料であるガソリンの使用量や走行時のCO2排出量を抑えることができます。

・節電の徹底

すぐに取り組める対策としては節電を徹底することも重要です。たとえば、空調の設定温度を夏は低くし過ぎず、冬は高くし過ぎないことや、誰も使用していない部屋の空調や照明を消すこと、照明器具を清掃した上で間引くこと、OA機器やパソコンの電源をこまめにオフにすることなどの取り組みが挙げられます。

一つひとつの取り組みの効果は必ずしも大きくないものの、継続的かつ全社的に節電を徹底することでエネルギー使用量を削減できるようになります。

・省エネに向けた設備投資計画を立てる

年代の古い機器は省エネ性能が低く、最新の機器に更新することで高い省エネ効果を得ることができます。設備投資計画を策定するとともに老朽化した設備や機器の状況を整理することで、どの設備や機器から優先的に更新すべきか把握しやすくなり、省エネに向けて効果的な投資が可能となります。

再生可能エネルギーを活用する

再生可能エネルギーの活用も重要な方策です。再生可能エネルギーには太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどがあり、いずれの方法でも発電時にCO2を排出しません(厳密にはバイオマスはCO2を排出するものの、植物の成長過程でCO2を吸収するためカーボンニュートラルの扱いとなります)。

再生可能エネルギーを活用することで、化石燃料の燃焼により排出していた分のCO2を削減できます。

再生可能エネルギーで発電している事業者への電力契約の切り替えも、再生可能エネルギー活用の選択肢となります。

ただし、再生可能エネルギーを利用して発電している新電力の会社は、電気料金高騰の影響を受け倒産するケースも珍しくないため、切り替え時には注意が必要です。

再生可能エネルギーは太陽光発電がおすすめ

前述のように再生可能エネルギーにはさまざまな種類がありますが、その中でも太陽光発電がおすすめです。

太陽光発電の設備は比較的狭いスペースでも設置しやすく、設備導入のコストを低く抑えることができます。さらに、自社の敷地を電力事業者に貸して発電設備を設置する「オンサイトPPAモデル」や「リースモデル」であれば、電力事業者が設備を所有するため、設置にかかる初期費用や管理にかかる維持費用を負担することなく発電が可能です。

また、発電した電力を蓄電設備に溜めておくことで、災害などで停電が発生した場合でも電力を利用できるため、事業が完全に停止するリスクを抑えることもできます。

再生可能エネルギーの中でも太陽光発電がおすすめな理由については、下記記事にて詳細に解説しております。ぜひご覧ください。

【関連記事】再生可能エネルギーで再注目される太陽光発電のメリットと種類

太陽光発電にはソーラーカーポートがおすすめ

太陽光発電の設備としては、商業施設や工場の屋上に設置するタイプや、農地や未開拓地の地面に架台を設置しその上に太陽光パネルを置くタイプ、農業と太陽光発電を組み合わせたタイプなどさまざまなものがあります。

その中でも特におすすめなのが、カーポートの屋根に太陽光パネルを設置するソーラーカーポートです。ソーラーカーポートは車4台が入るスペースがあれば設置可能であり、駐車場のスペースを有効利用できるほか、日差しや雨よけになるなどのメリットがあります。

屋上や農地などに設置する大規模な太陽光設備と比べ、導入コストも抑えることが可能です。

ソーラーカーポートでは電気代削減が可能です。下記をご覧ください。

ソーラーカーポートの導入で電気代削減を削減するには

脱炭素とカーボンニュートラルの違いを理解して取り組みましょう

この記事では脱炭素やカーボンニュートラルをはじめ、地球温暖化対策としてのCO2削減に関する用語を中心に解説しました。

CO2排出量をゼロにすることに主眼を置く脱炭素と、排出量と吸収量の差し引きをゼロにすることを意味するカーボンニュートラルの違いを踏まえた上で、今回ご紹介したような省エネ対策や再生可能エネルギー導入といった地球温暖化対策を進めることが重要です。

特に、ソーラーカーポートは比較的導入の費用対効果が高いためおすすめです。

ソーラーカーポートについては以下の資料で詳しく解説しています。ソーラーカーポートの概要や導入までの流れ、準備について知りたい方は、ダウンロードの上ぜひご覧ください。

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