省エネ法とは?概要や企業が取り組むべきことを解説

2023年11月20日
  • LinkedIn
  • Facebook
  • Twitter
省エネ法は1979年に制定されましたが、近年は地球温暖化対策の一環として省エネが重視される流れを受けて改正を重ねてきました。

省エネ法の対象となる事業者はエネルギーの使用状況の報告などが義務づけられていますが、どのような事業者が省エネ法の対象となるのか、また対象となった場合には何をすれば良いのか把握できていない方もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、省エネ法の概要や、省エネ法で規制対象となるエネルギーの種類や事業者などについて解説します。

省エネ法とはどのような法律かわかりやすく解説

省エネ法とは、エネルギーを利用する事業者に対して燃料や熱、電気などの有効利用を促すための法律です。

正式名称は「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」であり、1979年の制定以降たびたび改正を重ねてきました。

省エネ法には「直接規制」と「間接規制」という区分けがあります。直接規制の対象は「工場・事業場」と「運輸」の分野であり、省エネに向けた取り組みを行うための努力義務が設定され、さらに一定以上の規模の事業者にはエネルギー使用状況などの報告も義務づけられます。

間接規制の対象は自動車、家電製品といった機械器具の製造事業者または輸入事業者であり、対象品目のエネルギー消費効率の目標を設定し、事業者ごとに達成が求められます。

省エネ法の目的と背景

省エネ法はもととも、1970年代に発生したオイルショックを背景として制定されました。目的について、資源エネルギー庁は以下のように記載しています。

「内外におけるエネルギーをめぐる経済的社会的環境に応じた燃料資源の有効な利用の確保に資するため、工場等、輸送、建築物及び機械器具等についてのエネルギーの使用の合理化に関する所要の措置、電気の需要の平準化※に関する所要の措置その他エネルギーの使用の合理化等を総合的に進めるために必要な措置を講ずることとし、もって国民経済の健全な発展に寄与すること」

※電気の需要の平準化については、2013年改正時に導入。

出典:資源エネルギー庁「省エネ法の概要」

https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/summary/pdf/20181227_001_gaiyo.pdf?_fsi=oAgVnMzx

端的に言えば、資源価格高騰などの環境変化により省エネの必要性が高まったことを受けて、エネルギーを効率的に活用するための取り組みを進めるための法律だということです。

省エネ法の規制対象となる企業とは

省エネ法では、以下に該当する事業者が規制対象となります。

原油換算エネルギー使用量が1,500klとなる事業者とは

前年度のエネルギー使用量が原油換算で1,500kl以上の事業者は、翌年度の5月末日までに「エネルギー使用状況届出書」を提出し、特定事業者また特定連鎖化事業者の指定を受ける必要があります。

おおよその目安として、電気代が年間で8,000万円から1億円以上の場合、この水準に達している可能性が高いです。資源エネルギー庁HPで公表されている原油換算ツールにエネルギー使用量を入力することで、自社の原油換算エネルギー使用量を簡易的に計算することもできます。

資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/factory/procedure/index.html#03

工事・事業場における省エネ法

工場・事業者等で特定事業者(原油換算で年間1,500kl以上のエネルギーを使用する事業者)である場合、以下の義務が生じます。

・エネルギー管理統括者などの選任義務
「エネルギー管理統括者」と「エネルギー管理企画推進者」を1名ずつ選任します。

・中長期計画書の提出義務
翌年度7月末日までに、エネルギー消費原単位の削減等に関するおよそ3年から5年の中長期計画書を提出します。

・エネルギー使用状況等の定期報告義務
翌年度7月末日までに、毎年度のエネルギーの使用状況等を報告します。

運輸における省エネ法

運輸においては、輸送能力が一定基準以上(鉄道300両、トラック200台、バス200台、タクシー350台、船舶2万総トン(総船腹量)、航空9千トン(総最大離陸重量))の輸送事業者の場合は特定輸送事業者に指定され、以下の義務が発生します。

・中長期計画書の提出義務
事業者ごとの省エネ責任者の設置や、モーダルシフト実施のためのマニュアル策定などの計画書を提出します。

・エネルギー使用状況等の定期報告義務
輸送にかかわるエネルギー使用量や省エネ措置の実施状況などを報告します。

また、年間輸送量3,000万トンキロ以上の貨物を依頼する荷主は特定荷主に指定され、特定輸送事業者と同様の義務が生じます(定期報告に関しては、「委託輸送にかかるエネルギー使用状況等の定期報告義務」となります)。

省エネ法で対象となるエネルギーとは?

省エネ法で定義されるエネルギーには燃料、熱、電気があります。

(参照:資源エネルギー庁「省エネ法の概要」https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/summary/pdf/20181227_001_gaiyo.pdf)

 

省エネ法で対象となる燃料の定義

省エネ法で対象となるエネルギーの燃料としては以下のものがあります。

・原油及び揮発油(ガソリン)、重油、その他石油製品(ナフサ、灯油、軽油、石油アスファルト、石油コークス、石油ガス)
・可燃性天然ガス
・石炭及びコークス、その他石炭製品(コールタール、コークス炉ガス、高炉ガス、転炉ガス)であって、燃焼その他の用途(燃料電池による発電)に供するもの

省エネ法で対象となる熱の定義

省エネ法で対象となるエネルギーの熱とは、上記に示す燃料を熱源とする熱(蒸気、温水、冷水等)のことです。太陽熱や地熱など、上記の燃料を熱源としない熱は含まれません。

省エネ法で対象となる電気の定義

省エネ法で対象となるエネルギーの電気とは、上記に示す燃料を起源とする電気のことです。太陽光発電、風力発電、廃棄物発電など、上記燃料を起源としない電気は含みません。

令和5年から追加!省エネ法で対象となる化石エネルギーの定義

令和5年(2023年)4月に省エネ法が改正され、非化石エネルギーを含めたすべてのエネルギー使用の合理化が求められることとなりました。ここでの非化石エネルギーとは、化石燃料に該当しないもの全てから由来するエネルギーを指し、たとえば水素・アンモニア、合成燃料などが含まれます。

また、太陽熱(給湯・暖房)、地熱(熱利用)など化石燃料由来ではないエネルギーも非化石エネルギーと位置付けられます。

省エネ法で必要となる定期報告とは

前述の通り、省エネ法において特定事業者などに指定されると、エネルギー使用状況等についてまとめた定期報告書を提出する必要があります。定期報告書は毎年度作成し、翌年度の7月末日までに管轄の経済産業局に提出します。

定期報告書における主な報告内容は以下の通りです。

・化石燃料に由来する燃料・熱及び電力の使用量:「原油換算値」
・エネルギー消費原単位とその推移:「年毎の省エネの実践状況」
・エネルギーを消費する設備の運用管理の状況
・温室効果ガス排出量の報告等

定期報告書を作成する際には、資源エネルギー庁が公表している「定期報告書作成支援ツール」または環境省の「省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム(EEGS)」を活用すると便利です。

なお、定期報告書作成支援ツールは令和5年度をもって廃止となるため、令和6年度以降の省エネ法定期報告書の作成については、EEGSの利用が推奨されます。

資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/factory/support-tools/

環境省「省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム(EEGS)」
https://ghg-santeikohyo.env.go.jp/system

定期報告を提出した後の流れ

以下では定期報告を行った後の流れについて解説します。

定期報告を提出する全ての事業者がクラス分けされる

定期報告書を提出すると、内容に応じてS、A、B、Cの4つにクラス分けされます。クラスに応じて取るべき対応が異なるため、注意が必要です。

Sクラス事業者の基準と対応

Sクラスは省エネ目標を達成した優良な事業者が該当します。5年間平均原単位を年1%以上低減する「努力目標」を達成しているか、またはベンチマーク制度の対象業種・分野において、事業者が中長期的に目指すべき水準を達成することが選定基準です。

優良事業者として、経産省HPにて事業者名や連続達成年数が表示されます。

Aクラス事業者の基準と対応

Aクラスは省エネのさらなる努力が期待される事業者が該当します。明確な達成水準はないものの、後述のBクラスより省エネ水準は高いが、Sクラスの水準には達しない事業者が分類されます。

Aクラスの事業者に対しては、省エネ支援策等に関する情報をメールで送付し、努力目標達成を促す流れとなります。

Bクラス事業者の基準と対応

Bクラスは省エネが停滞している事業者のことです。努力目標を達成しておらず、かつ直近2年連続で原単位が対前度年比で増加、または5年間平均原単位が5%超増加している事業者が該当します。

Bクラスの事業者に対しては、注意喚起文書を発出し、現地調査を重点的に行うこととなります。

Cクラス事業者の基準と対応

Cクラスは、Bクラスの中でも特に注意を要する事業者のことです。Bクラスの事業者に対する現地調査、立入検査の結果、判断基準遵守状況が不十分と判断された場合にCクラスと判定され、省エネ法第6条に基づく指導が実施されます。

省エネ法の効果的な取り組み

省エネ法においては化石燃料を中心とするエネルギーの使用量を抑え、非化石エネルギーへの転換を図る必要があることから、以下でご紹介するような再生可能エネルギーの導入が重要となります。

太陽光発電

再生可能エネルギーには太陽光や風力、地熱、バイオマスなどさまざまな種類がありますが、その中でも特に効果的なものが太陽光発電です。その理由としては、太陽光発電は再生可能エネルギーの中では比較的導入コストが安価であり、屋根や遊休地、駐車場など活用されていないスペースを有効活用できることなどが挙げられます。

全国的に普及している発電方法であるため専門の業者が多く、導入やメンテナンス、修理などの際にすぐに対応してもらいやすいこともメリットです。

ソーラーカーポート

太陽光発電の中でもおすすめの設置方法が、駐車場の屋根にソーラーパネルを設置するソーラーカーポートです。建物の屋根に設置する場合、屋根の面積や耐荷重、傾斜している方角などの関係から設置に向かないこともしばしばあります。

一方、設置ソーラーカーポートは車4台が入るスペースがあれば設置可能であり、駐車場のスペースを有効利用できるほか、日差しや雨よけとしても活用できるなどのメリットがあります。また、工場の屋上や農地などに設置する大規模な太陽光設備と比べ、導入コストも抑えることが可能です。

省エネ診断(管理標準作成サポート)が可能です

屋上緑化システムでは、省エネ診断(管理標準作成のサポート)が可能です。

省エネ法に基づき、エネルギーの使用における取組方針や管理マニュアルを作成いたします。

エネルギー使用設備の運転管理・計測・記録、保守・点検を行い、エネルギーの使用を合理化するための管理マニュアルが作成可能です。

省エネ法を遵守するための、省エネ管理や省エネ活動の手引書として活用することができます。

ご興味のある方はぜひ以下よりお問合せください。

お問合せ